不動産物件を売却する時、全区画賃貸中、いわゆる満室稼働物件でないと高く売れないと考えることもあるかもしれません。
確かに賃貸中のオーナーチェンジ物件であれば最初から賃料収入が見込めるので、収益は安定しています。その結果「早く」売れるケースは多いかもしれません。
しかし空室があるからといって、「高く」売ることは不可能ではないのです。
そこで、空室がある物件を高く売るための3つのポイントをお伝えします。
まずは空室の設備を最新設備に交換し、その後売却するという方法があります。
この対策には2つのメリットがあります。
1つ目は、設備を最新のものに変えることで物件の価値が高まり、その価値を売却価格に反映できる点です。
飲食店などを運営している場合、設備の良し悪しで売却価格も違ってきます。古い厨房設備しかない場合、あまり良い値段はつかないでしょうし、売れにくくなってしまいます。
そこで最新の設備、器具を導入し売却を検討しましょう。
最新の設備が揃っていればその設備を価格に含められます。
2つ目は、仮に空室のまま売却することになったとしても、早期でのテナント入居の可能性が高いと買い手に感じてもらえる点です。
最新の設備が揃っていれば、購入側した側も「最新の設備が整った物件」として貸し出せるので、すぐに賃借人が見つかるだろうと感じてもらえる可能性が高いです。空室があってもすぐに入居者が決まりそうな状態であれば、買い手にとって大きなデメリットになりません。むしろ古い機材や設備でテナントがつかない状態のまま、オーナーチェンジ物件で売却しようとしても、その時点の物件の価値や賃料収入を元にした価格設定しかできず、「早く」はともかく「高く」売ることが難しいケースも多いのです。
空室だからこそ、物件の価値を高めるリフォームや設備交換が可能なのです。空室をチャンスと捉えて、物件の価値を高めて高値売却の戦略を練りましょう。
それでも「設備交換やリフォームの費用がない」「資金繰りのために満室にして早く売らなければいけない」という事情がある方もいるでしょう。その場合は、賃貸条件の見直しを検討してみましょう。
主な見直しの条件は3つです。
賃料の値下げは利回りの低下、すなわち売却価格の低下に繋がります。そのため賃料を下げるのではなく、フリーレントをつけることを考えましょう。フリーレントをつければ賃借人も初期費用をある程度抑えることができるので入居のハードルが下がり、入居者が決まりやすくなります。賃料の値下げをするよりも効果的な場合もあるのです。
飲食店物件の場合、保証金として賃料の6ヶ月分~10ヶ月分などまとまったお金を用意するのが一般的です。建物を使用することによって、損害消耗や摩耗が発生し物件の状態を元に戻すのに多額の費用がかかることがあるからです。
しかしその保証金が高額のため、なかなか入居者が決まりにくいというケースもあるのです。
そこで保証金の金額を下げることを検討しましょう。もちろん退去時の現状解約のための費用は必要になるので、例えば保証金の金額は低く抑えるものの、退去時の原状回復費用は賃借人の負担で実費精算とする、などの決まりをつけます。
そうすれば、物件を売る側にとっては満室になることで売れやすくなり、賃借人にとっては保証金が抑えられるので当初の自己資金を抑えられ、入居しやすくなります。もちろん退去時のために別途決まりを設け、きちんと原状回復してもらうことで、退去時にトラブルが発生するリスクを抑えることができるので、買い手も安心して物件の購入を検討できるでしょう。
物件によっては飲食店不可、ペットショップ不可など用途の制限を設けることもあるでしょう。確かに店によっては他のテナント物件に影響を与えてしまうことを考えて、特定の業種の入居を制限することで建物内の調和を図ることもあるでしょう。しかし、それゆえになかなか入居者が見つからないこともあるのです。
そこで「臭いや煙は他のテナントに迷惑をかけるため、火を使わない飲食店ならば相談可能」「小中学生対象の学習塾は競合が入居しているため、高校生対象であればOK」など、条件の一部分を緩和してみましょう。
なお、このような条件の緩和をする際は、必ず既存のテナントに可否を相談しましょう。事前に承諾を取っておくことで、後々のトラブルを回避することができます。
三つ目の対策として、自己使用可能であることを効果的にアピールすることが挙げられます。
テナント入居済み物件の購入を検討している人に対して、「賃料収入を得るだけでなく、空いている区画でご自身の事業を行ない、収益をあげませんか」と提案してみるのです。
満室の場合自分で使用するスペースは残されていませんが、空室のある物件であればその部分を教室や事務所として使うことで、フレキシブルな運用が可能になります。
特に今都心のテナントビルは非常に利用率が高く、良い立地でテナント物件を探すのも簡単ではありません。自身で事業展開もしている、もしくは検討している買い手にとっては、空室はむしろ魅力になり得るのです。空室がメリットになっている物件であれば、そのような点をアピールしてみるのも一つの手です。
空室のある物件は満室の物件と比べて、マイナスのイメージを持たれてしまう可能性が高いことは否定できません。しかし、条件やアピールの方法を変えるだけで、買い手に魅力的な物件であると感じてもらうことができるのです。その物件の現状をしっかりと分析して効果的な提案を行ない、最大限の利益を生み出す形での売却を目指しましょう。