近年、不動産投資の中でも、不動産小口化商品による投資が脚光を集めています。人によっては、一棟の不動産に投資するよりもメリットが大きいかもしれません。今回は、そもそも不動産小口化商品とはどのようなものか、そしてメリットやデメリットは何かについて見ていきたいと思います。

不動産小口化商品とは、複数の投資家がお金を出し合って不動産を取得し、その不動産から得られる収益を出資割合に応じて分配する投資商品です。不動産特定共同事業法に基づく投資方法で、許可を受けた事業者だけが取り扱うことのできる商品です。

不動産小口化商品には、以下の３つの種類があります。

複数人の投資者が共同所有する不動産を事業者に貸し出し、賃料として収益の分配を受ける商品です。中には事業者に貸し出すのではなく、業務委託契約のもとで事業者が第三者に貸し出すという場合もあります。

投資家と事業者が「任意組合契約」を締結し、その組合で投資が行われる商品です。事業者は不動産を運用することで報酬を受け取り、投資家は運用で発生した収益を分配して受け取ります。この手法では、投資家と事業者が協同して事業を行なうという特色があります。

投資家と事業者が「匿名組合契約」を締結し、その組合で投資が行われる商品です。任意組合型と異なり、投資家と事業者が共同で事業を行なうのではなく、事業者の単独事業となります。投資家はその事業に出資するという形になり、不動産の所有権を持ちません。そのため、登記上に投資家の情報が載ることはないのです。これが「匿名型」と言われるゆえんです。

個人で不動産投資をするには、数百万から数千万、時には億単位の資金が必要となり、かなりハードルが高いと言えます。しかし不動産小口化商品は、複数の投資家が資金を出し合って不動産を購入する仕組みのため、購入費用を抑えることが可能です。一人一人の負担を抑えつつ、いわゆる一等地と呼ばれる場所に建つ不動産に投資をすることができるのです。

不動産小口化商品は、許可を受けた事業者が賃借人の募集、家賃の請求・回収、不動産の管理業務を行ってくれるため、各出資者は自ら当該不動産の管理を行う必要はありません。管理の知識や時間がない方でも、不動産投資を始めることができます。

賃貸型と任意組合型では、受け取る収益が不動産所得となります。つまり青色申告の対象となり、特別控除を受けることができるようになるのです。

不動産の所有者となる賃貸型と任意組合型では、相続税の節税にも効果があります。相続の場面では、不動産の価値は実際の取引価格ではなく、評価額によって算定されます。評価額は実際の取引価格よりも低く算定されるため、現金よりも節税につながります。

不動産小口商品は、一棟不動産に投資するよりも少額の費用で済みます。複数の不動産小口商品を取得して、リスクの分散を図ることも可能なのです。

不動産小口化商品自体が新しい投資商品であるため、現時点ではそれほど種類がありません。自分の希望に合った商品が見つからなかったり、商品そのものの人気が高くて購入できなかったりという場合が考えられます。

不動産小口化商品では、所有者ではなく専門の事業者が不動産の管理業務を行うことになります。従って、収益の中に事業者の取り分が生じるため、出資者への分配金が減額されることになります。個人が単独で投資する場合に比べると、どうしても利回りが低くなりがちです。

不動産小口化商品は中途解約が認められていなかったり、特定の業者しか扱えないために売却先を探すことが難しかったりと、換金の面で苦労が多いです。ゆくゆくは換金することも視野に入れているのであれば、売却先を探すためのネットワークを持っている事業者を選ぶなど、購入する前の段階から工夫が必要と言えます。

一般的な不動産投資では、金融機関から融資を受けて物件を購入します。ですが不動産小口化商品は、複数の投資家で不動産を共有するという性質上、その不動産を担保とすることができません。融資を受けることができないため、購入には自己資金が必要になることが大前提です。

以上、不動産小口化商品の内容、および、そのメリット、デメリットを見てきました。 不動産小口化商品は、不動産投資に興味があるものの、知識や管理業務などにハードルを感じている方にとっては良い入口と言えるかもしれません。気になる方は、一度不動産会社に相談してみましょう。