不動産を売却すると、売主は買主から売買代金を受け取ることができます。
しかし、売買代金全額がそのまま手に入るわけではありません。売買契約の締結から物件の引き渡しまでの段階において、相応の費用負担が生じることが一般的です。
本項では、不動産を売却する際に、売主がどのような費用負担をする必要があるかについて見ていきたいと思います。
売買契約を締結するには、契約書を取り交わすことになります。その契約書には、印紙税法に定められた印紙を貼り付ける必要があります。
売買契約は、売主保管分と買主保管分の2通を作成し、それぞれに印紙を貼り付けることになります。そのため売主と買主は、それぞれ自分が保管する契約書に貼り付ける印紙の費用を負担するのが一般的です。
印紙の額は、売買する不動産の代金によって変動します。
契約金額 | 印紙の額 |
500万円超〜1000万円以下 | 1万円 |
1000万円超〜5000万円以下 | 2万円 |
5000万円超〜1億円以下 | 6万円 |
1億円超〜5億円以下 | 10万円 |
参考:国税庁
URL:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7140.htm
但し、平成26年4月1日から令和4年3月31日までの間に作成される不動産譲渡契約書については、印紙税の税額が軽減されていて、以下の金額となっています。
契約金額 | 印紙の額 |
500万円超〜1000万円以下 | 5000円 |
1000万円超〜5000万円以下 | 1万円 |
5000万円超〜1億円以下 | 3万円 |
1億円超〜5億円以下 | 6万円 |
参考:国税庁
URL:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7108.htm
特に土地の売買契約などの場合、土地面積の測量や隣地との境界画定が、売主の義務として定められることがあります。この場合には、義務を負っている売主の費用負担となります。
建物の売買契約の中には、建物自体にリフォームやクリーニングをした上で売却するという取り決めがされているものがあります。この場合も、取り決めの中で義務を負っている売主が負担することになります。
不動産売買では、多くの場合は融資が利用されます。そして融資を実行する金融機関やローン会社は、売買の目的物となる不動産を担保とし、抵当権等の権利を設定します。
新たに不動産を売却するためには、売買時点で不動産に設定されている、売主名義の抵当権等の権利登記を抹消しなければいけません。不動産をまっさらな状態にして売却する必要があるのです。
抵当権の抹消費用の内訳は、おおまかに以下の通りです。
不動産会社に売買の仲介を依頼した場合には、仲介手数料を支払うことになります。 仲介手数料の上限金額は、宅地建物取引業法で定められています。具体的な金額は、この上限金額の範囲内で仲介会社が決定することになります。
売買価格 | 仲介手数料の上限金額 |
200万円以下の部分 | 売買価格の5%+消費税額 |
200万円超〜400万円以下の部分 | 売買価格の4%+消費税額 |
400万円超の部分 | 売買価格の3%+消費税額 |
*略式計算式:売買価格×3%+6万円+消費税額
不動産を売却して買主から受領する代金のうち、譲渡所得分に対しては譲渡所得税がかかります。譲渡所得とは、当初その不動産を取得した際に要した費用、および今回不動産の譲渡に要した費用を、売却価格から控除した残りの額のことです。つまり、不動産の購入から売却を通してプラスになった部分の金額を指します。
*譲渡所得=売却価格−当初の取得に要した費用−譲渡に要した費用
譲渡所得税の税率は、当該不動産を保有していた期間に応じて、次の2種類となります。
種類 | 対象期間 | 税率 |
短期譲渡所得 | 所有期間が5年以下 | 39% (所得税30%、住民税9%) |
長期譲渡所得 | 所有期間が5年を超える | 20% (所得税15%、住民税5%) |
参考:国税庁
URL:https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/05_2.htm
なお譲渡所得税については、特別控除や軽減税率の特例が定められています。
不動産を売却した場合、売主は譲渡代金の全額を取得できるわけではなく、売買に関する費用を負担しなければならない場合があります。
「こんなに費用がかかると思わなかった」と後悔しないように、費用の内訳や手元に残る利益は事前に確認するようにしておきましょう。
不動産売却について専門家による無料相談を承ります。お気軽に是非ご利用ください。