不動産の売却時期を考えた時、東京オリンピックを一つの節目として考えている人も、多いのではないでしょうか。
たしかに日本の海外からの観光客数は、東京オリンピックをピークとしその後はいったん下落するものとみられており、経済に与える影響は大きいものがありそうです。
そういった影響が、不動産の価格にどのように作用するのか、様々な角度から分析してみましょう。
まず、東京オリンピック前後で不動産相場が大きく変わるのか、という点が問題になります。
結論としては、その影響は非常に小さなものである可能性が高いです。
なぜなら、オリンピックの後にも数々の開発計画が予定されているからです。
東京において予定されている具体的な開発計画としては、以下のようなものが挙げられます。
ここに挙げた事例以外にも、東京で予定されている開発計画は数多くあります。
そして大阪や横浜などでは、IR施設の開発計画が進行しています。
2025年には大阪万博も予定されています。
観光客の数が一時的に減少することは考えられますが、観光大国となった日本への外国人観光客数が減退する理由は見つかりません。
また、現在の不動産業界を取り巻く空気の特徴も、根拠のひとつとなります。
現在の不動産市況をバブル期の再来だととらえる方々も一定数います。
しかしバブル期と比べると、現在の不動産価格の上昇は緩やかであり、投機目的ではなく実需に沿っての値上がりだと見られます。
そのため、バブル崩壊時のような価値の暴落が起こる可能性はそこまで高くないと言えるでしょう。
さらに、オリンピックに伴う好景気に沸いている建築業界ですが、施工価格の値上がりによってマンションの建築価格の高騰を招くことにもなりました。
オリンピックが一段落することで、再度マンション建設が活性化する可能性もあります。
以上の理由から、オリンピックが与える不動産相場への影響は、過度に危惧するようなものではないということが言えそうです。
本当に不動産相場が変わらないと言えるのか、具体的なデータから見ていきましょう。
1つ目は、人口のデータです。
東京都内の人口は2020年に1400万人を突破する勢いであり、東京に隣接する神奈川県川崎市や千葉県市川市、埼玉県川口市などの人口も年々増加しています。
地方の人口が減少していますが、東京へ流入する人口は増えています。
東京の不動産需要はこれから先も伸びていくものとみられます。
2つ目は、地価のデータです。
地価を見ると、東京の公示地価は2014年以降6年連続で上昇しています。
一部のエリアでバブル期を上回ったこともあり、今がバブルの再来とも言われています。
しかし、バブル期と比べると、東京都の地下は上昇していますが、日本全体の地価が上昇しているわけではありません。
そのため大きな投機ブームが起こることもなく、緩やかかつ、堅調な地価推移が見られます。
上りきった不動産価格が一気に下落することを恐れる人がいますが、そもそもそれほどの不動産投資ブームが起きていないため、価格崩壊が起こる可能性は低いでしょう。
参考:土地代データ
URL:https://tochidai.info/tokyo/
3つ目は、観光客数のデータです。
また、観光客も増加中であり、特に沖縄や北海道といった元々観光需要の高かったエリアは大きな観光客数の増加を見せています。
こういったエリアは、産業の観光客への依存度が高いため、バブル崩壊と同じような現象が起こる可能性はあります。
しかし東京の観光客数については、宿泊施設の需要が足りていない状況であり、ホテルの宿泊価格も年々上昇しています。
国を挙げて観光客を招くような取り組みの結果として起こるのは、海外からの需要に沿った不動産事業の発展と、宿泊施設の増加です。単なる一時的な人気の上昇後のような需要の落ち込みは起こりにくいものといえます。
ただし日本は中国人観光客への依存度が多いため、中国との関係が悪化すれば観光客が減少する可能性はあります。
現に、2019年福岡市では韓国からの観光客が大幅に下落しました。
観光客の賑わいからの影響を考える方は多くいますが、国際情勢を気にした方が良いといえます。
最近世界で話題になっている新型ウイルスの影響も無視できません。
東京オリンピックは2020年夏の開催であり、すでに間近に迫っています。
その間近に迫っている中でも、大幅な価格の下落は見られません、
そのため、実際に不動産相場へ及ぼす影響は軽微と言えるでしょう。
とはいえ、これからしばらく不動産相場はノーリスクであるかというと、そうではありません。
ここでは、不動産価格の下落に影響する可能性のある2つの要素をご紹介いたします。
2022年に東京都内を中心に、生産緑地制度が解除されます。
生産緑地制度とは、その土地で農業を継続する代わりに、固定資産税や相続税等において優遇を受けられる制度のことです。
この制度か解除された結果、農地を住宅地として利用することが可能になります。特に世田谷区や練馬区内は、生産緑地と指定されていた土地面積の規模が大きく、その土地が一気に住宅地になれば、不動産価格に影響する可能性があります。
数年以内に到来することもあり、注視する必要性があるでしょう。
今後に限らず、現在進行形で不動産価格の下落を招いている要因が、銀行の個人投資家への融資引き締めです。
スルガ銀行や西京銀行の不正融資問題などに端を発した銀行の個人投資家への融資問題は、一棟アパートや一棟マンションなどの価格下落を招いています。
これらの不動産の買い手は、銀行からの融資を必要とする個人投資家が多かったため、価格の下落はまだ続きそうです。
ただし現金で購入できる人にとっては、むしろ以前と比べて安く物件を手に入れることができるチャンスであるともいえます。
いずれにしても、現在の社会情勢をよく見つめ、将来にわたる長いスパンで投資計画を考えることが今まで以上に必要になることは、言うまでもありません。