今や不動産投資の形にも、様々なものがあります。一般的な投資手法として有名なのは、アパートやマンションなどの集合住宅を賃貸物件として貸し出し、賃料収入を得るというものでしょう。
賃貸物件の経営は、人が生活する限り需要は存在するものの、収益性のみで考えれば、必ずしも最良の手段とは言えない側面があります。
一方で最近は、民泊や簡易宿泊所といった「宿泊所経営」を耳にする機会が増えました。
そこで、「民泊や簡易宿泊所って儲かるの?」「興味はあるけれど、手続きや届け出が面倒そう…」といった一般的な疑問を調査し、これらに不動産投資を行うときのメリットとデメリットについて、お伝えします。
民泊を運営するためには、住宅宿泊事業法、いわゆる民泊新法の認定を受ける必要があります。
この法律により、民泊物件は一年間のうち営業できる日数は、180日を超えることができません。
一年間のうち最大でも180日しか宿泊者に貸し出すことができないため、おのずと利益の上限も決まってきます。
他にも、営業するために自治体への届出をしたり、外国人客のために複数の言語で標識を掲示したりする必要があります。さらに家主不在での運営の場合は、住宅宿泊管理業者への業務委託義務があり、賃貸経営と比べて多くの制限が設けられています。
この制限の中で利益を上げるためには、管理や維持にかかるコストを削減する、もしくは客単価を上げるしかありません。
簡易宿泊所を運営する場合は、旅館業法の許可が必要となり、同法の規制を受けることになります。
民泊の場合は届出をするだけでしたが、こちらの場合は行政の了承を得る必要があるため、よりハードルが高いと言えるでしょう。
運営するため常駐の人員も求められることもあり、人件費などの経費支出も大きいものがあります。
民泊と違い営業日数に制限はありませんが、その分運営者に要求される義務も多いのです。
民泊と簡易宿泊所の特徴について理解いただけましたでしょうか。
ここからは実際に、不動産投資による収益性について見ていきます。
一般的な賃貸の不動産経営と比較してみましょう。
3-1.賃貸物件を運営した場合
外国人観光客に対する民泊施設の需要が高い台東区では、ワンルーム1K物件の賃料相場は101,600円です。
出典:HOMES
URL:https://www.homes.co.jp/chintai/tokyo/city/price/
そして同じく台東区のワンルームマンションの中古ワンルームマンションの平均的な相場は、2,640万円です。
出典:HOME4U
URL:hhttps://www.home4u.jp/buy/search/sbMatrixDispArea/3/3/13/disp=1
この2つの数字から年間の利回りを計算すると
101,600(円)×12(ヶ月)÷26,400,000(円)=4.62%
です。
ただし、これはあくまでも表面利回りの数字です。価格の安い中古物件を購入した際は、維持費などの費用もかかるので、実質利回りは3%代になるでしょう。
3-2.民泊を運営した場合
賃貸経営と同じように、台東区内で民泊物件を運営した際の経営シミュレーションをしてみます。
もちろん、同じ民泊でも物件によって宿泊条件は異なります。平均値としては、一人当たりの宿泊単価は1万円前後。複数人が宿泊できる部屋や建物全体として貸し出す場合は、2~5万円前後といったところが多いようです。
出典:STAY JAPAN
URL:https://stayjapan.com/area/tokyo/taitoku
ただし後者の場合、当然ながらワンルーム物件では宿泊客数に対して充分なキャパシティを備えていません。そのため、大きめの物件を購入する必要があります。 仮に2人にまで貸し出せるワンルームマンションを購入し、一人当たり1万円前後の宿泊費を設定して、一年の上限である180日間営業した場合の収益は、最大で360万円です。
なお、これは稼働率100%の場合です。より現実的な数値を導き出すために、実際の部屋の稼働率が80%、1回あたり宿泊人数を1.5人だとして計算してみると、
180(日)×1.5(人)×0.8(稼働率)=216
年間の売り上げは216万円です。
建物購入価格を先程の賃貸物件と同じとして、表面利回りを見ると
2,160,000(円)÷26,400,000(円)= 8.18%
となり、賃貸物件を運営した場合の利回りを大きく上回ります。
収益性だけで言えば、賃貸物件よりも民泊物件に分があります。
しかし、民泊物件の需要があるエリアが限られていることや、各種の法律による制限や届出の義務、さらには清掃やクレーム対応などの手間やコストが発生することも把握しておく必要があります。
実際の利回りは、表面利回りよりも低くなるでしょう。
より収益を上げるためには、築古の戸建て物件を購入し、ハイグレードな新築物件に見えるようリノベーションするのも手です。団体客に一泊4~5万円で貸すことができれば、さらに高い利回りを確保できるかもしれません。
3-3.簡易宿泊所を運営した場合
最後に、簡易宿所を運営した場合の収益性のシミュレーションも確認しましょう。
今回は、建物の用途制限を受けない100平方メートル未満の物件で簡易宿泊所を運営した場合を考えます。
簡易宿泊所の1泊あたりの宿泊費は、4,000円前後です。
一人あたりの部屋は3畳=約5.5平方メートルとし、フロントやトイレなどの広さも考え、宿泊客用の客間は15部屋設置したとします。
稼働率を50%と見積もれば、
15(部屋)×4,000(円)×365(日)×50(稼働率)=1,095万円
100平方メートルの戸建てを、リノベーション費用も含め6,000万円で取得した場合、年間の利回りは
1,095÷6000=18.25%
表面利回りだけで見れば、365日運営可能なこともあり非常に高い数字です。
ただし賃貸経営や民泊に比べてより一層制限は増えるため、その分コストも多くかかります。
ここまで三パターンの不動産投資について見てきました。
収益性で見れば、
簡易宿泊所>民泊>賃貸
と言えます。
一方で法律の制限を受けたり、維持費や管理の手間がかかったりといった煩わしさが少ないものは
賃貸>民泊>簡易宿泊所
という順番になるでしょう。
また民泊や簡易宿泊所は、立地選びや建物のコンセプト決定など、賃貸物件よりも綿密なマーケティング戦略や宣伝を行ないながら運営する必要もあります。
本格的に腰を入れ事業として取り組みたい場合は、民泊や簡易宿泊所の運営で大きな収益を狙えます。逆に、管理会社などの専門家に任せて賃料収入を得たい場合は、賃貸物件運営をおすすめします。
自身の目指す方向性に合わせた不動産運営を選ぶことこそが、不動産都市による利益を最大化させる方法ではないでしょうか。