「所有している物件が違法建築の場合は、用途変更ができないの?」
「検査済証を取得したり、用途変更をしたりするにはどうすればいい?」
など、違法建築物の扱いについて困っている人も多いはずです。
たとえ違法建築物だとしても、用途変更や検査済証の取得は可能です。しかし、そのやり方を知っているかとなると、自信を持つことができる人は少ないのではないでしょうか。用途変更や検査済証のやり方は、物件を増改築したり売買したりするときにとても大切になってきます。
ここでは、以下3点について紹介します。
ご自身で保有されている物件が違法建築であるという方は、参考にしてください。
そもそも違法建築とは、建築基準法や都市計画法、各自治体の条例などの法律に違反して建築された建物のことです。
違反建築とも呼ばれ、具体的には建ぺい率や容積率、接道義務の規定などに違反している建物になります。
たとえば、建ぺい率の上限が70%の敷地で80%の建物を建ててしまう、容積率60%の場所に70%で建ててしまう、幅員4メートル以上の道路に、既定の2メートルに満たず1メートルしか接していない、というような場合が挙げられます。
また、建築確認申請などの必要な手続きをしていないため、検査済証が存在しない建物も、違法建築物に該当します。
違法建築となった主な原因は以下のとおりです。
違法建築の場合でも売買自体は可能ですが、行政は違法建築について、移転や除去、改築や使用禁止などの措置を所有者に講じることができるため、所有者は将来的な不安に悩まされることになります。また当該建物の建て替えをする際には、既存建物と同等の建物を建てることができません。 さらに不動産広告では、上記のような理由から再建築ができない建物に対しては、「再建築不可」などの表示をする義務があります。このような表示がされている物件は、買い手からすれば購入前から不安要素のある物件となるため、購入を躊躇されてしまうでしょう。
加えて違法建築の場合は、金融機関の審査が通らず、物件購入のための住宅ローンが借りられないことも少なくありません。なぜなら違法建築物は担保価値が低く、万が一の際に売却をしても資金回収が難しいと判断されてしまうためです。耐震性や再建築などの面にも問題があると判断され、売却自体が難しいと結論付けられてしまうからでもあります。
違法建築とは、建築基準法などの法律に抵触しているだけでなく、そこから発生する様々なリスクを抱えている物件であると言えます。
検査済証とは、建築確認、中間検査、完了検査のすべての確認検査で合格が出て、建築基準法に適合している建物だと認められた場合に発行される書類のことです。発行元は確認検査機関や行政機関になります。
建物の検査済証がない場合は、原則的に以下のことができません。
また、検査済証がないことで、金融機関から融資を受けることができなかったり、売却をしようにも値段が付かないことになってしまったりする可能性があります。
ただし、検査済証がない場合は、再取得することが可能です。
以下どちらのパターンに該当するかで取得方法が変わってきます。
(1)これまで検査済証は発行されていたが紛失した
(2)違法建築のためこれまでに検査済証自体が発行されていない
(1)の場合は行政に手順を踏んで依頼するだけで、検査済証を得ることが可能です。
(2)の場合、検査済証が発行されていないため再発行はできませんが、条件をクリアすれば取得できる可能性があります。
具体的には、以下で紹介する国交省で2014年に設けられたガイドラインにもとづき、調査や申請を行う方法です。
建築基準法などに抵触している状態を解消し、再度調査等を受けて合格をすることで、検査済証を得られる可能性があります。
国土交通省は、2014年に「検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関を活用した建築基準法適合状況調査のためのガイドライン」を公表しました。
出典:国土交通省
URL:https://www.mlit.go.jp/common/001046527.pdf
これまでは、検査済証のない建物は増改築工事や用途変更はできませんでした。
しかし、このガイドラインが策定されたことで、検査済証のない建物でも検査済証を再取得して、増改築や用途変更ができるようになります。
たとえば、改めて建築確認申請が必要となる場合は、法適合状況調査を行い、報告書を提出することで建築確認申請の受理が可能です。
このガイドラインに沿って手続きを進めることで、検査済証を再取得し、用途変更を申請することができます。
ただし、違法建築の建物はそのままだと対象外となるため注意が必要です。
違法の原因となる部分を適法となるように改修したうえで、進めていかなければいけません。違法建築のままで申請をしたとしても、検査等で合格することはありません。
もし、違法建築ではなく、当時の法律には適合していたけど今の法律には抵触する既存不適格建築物の場合は、緩和措置があります。
検査済証がない建物を用途変更したい場合は、物件によって状況が異なるため、設計事務所や行政機関に相談をするようにしましょう。